デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

デザインは結果がすべて

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スポーツや格闘技のように勝ち負けがハッキリと分かる世界とは違って、優劣が分かりにくく明快な勝敗のない世界・価値観の中で勝負するということは、ある意味ルールがないことにも通じる。それは即ち何をしても良いという世界なのだけれど、そこには誇りや挟持、愛といった目に見えないルールが存在する。人に約束すると言うよりは、自分に課す掟を持つ、覚悟をするということなんだと思う。

百の言葉で語っても、まわりの状況を説明しても、デザイナーの手から離れたデザインはそれ自体が人々を納得させるべきものである。


なんてことを考えてしまう、最近の騒動なのであります。。

今回は、ほぼ独り言です。




写真は日本一長いと言われる京都駅、0番ホームです。

HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由

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なんだか自分が何となく考えていることや、モヤモヤしていたりすることを、スッとすくってくれるような言葉に出会うことがあります。そして、まさに今のタイミングで出会う「本」というのがあります。

僕はタイトルやジャケットで本を買うことが多いのですが、今自分が必要としていることが書かれている「本」に出会う確率が高いように思います。これは直感力みたいなことかも知れません。

で、「デザイン」が色んな意味で注目されている今、これはお薦めしたい一冊です。
デザイナーも、デザイナーを目指す方も、またデザイナーでない方にも。本来のデザインが何なのかが分かると思います。ぜひ。


以下、この本の帯に書かれているデザイナー 深澤直人氏の紹介文です。

[アリス・ローソーンはデザイナーから最も尊敬されるデザイン評論家で、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙にデザインについてのコラムを書いていた。インタビューのとき私は不思議な感覚をおぼえた。彼女は質問に対する答えを既に知っている気がしたのだ。同時にこの膨大なデザインの知の集大成を読みながら既知感覚ともいえる共感の喜びを感じていることにも気付いた。
この本は「デザインの事実」だし、論理ではなく「デザインの定義」の多様性を何一つ漏らさず詰め込んでいる。デザインという危うい美的な印象を持ちかねない言葉に疑いを持つ、誰もの矛盾する本音にはっきりと触ってもいる。
「デザインとは何か」。デザインはこの一冊で理解し尽くせると確信している。


HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由
アリス・ローソーン 著・石原 薫 訳
フィルムアート社 刊

 

HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由

HELLO WORLD 「デザイン」が私たちに必要な理由

 

 

ほんとうに必要なもの 〜それってデザインする必要ありますか?〜

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ロゴマークっぽくお願いします」
「シンボルマークとか欲しいよね」


「っぽく」や「とか」って何だろうか?

そして、何でもかんでも直ぐにロゴタイプやシンボルマークを作りたいとのお話を聞くけれど、それってほんとに必要なんだろうか。

なぜ、今ロゴをリニューアルする必要があるのか。
なぜ、今シンボルマークを新たに作る必要があるのか。

それらを新しくデザインすることで得られるものと、そして新しくすることで、捨てなければならないものがあることを考えたことがあるのだろうか。



例えば、パンフレット作りたいとの依頼。パンフレットに載せたい具体的な内容やイメージなどは当然として、僕が一番知りたいのは「なぜ今パンフレットを必要と考えたか」ということと、「パンフレットで何をしようと(何を得ようと)しているのか」だったりしする。

そういう視点で話を聞いていくと、その依頼主には必ず困っていることがある。「商品が売れない」や「ブランドが認知されない」など。

それらの問題を解決するために「パンフレット」を作ろうという結論を下されたようだけど、ここでひとつ問題がある。それは「本当にパンフレットがそれらの問題解決に有効なのか?」ということ。おそらく依頼主は、同業他社や知り合いや色んなネットワーク、情報から漠然と「パンフレットが有効なんじゃないか」と考えたはず。

しかし、問題を解決するにはもっと簡単で、もっと有効なことがあるかも知れなくて、逆に根本から考え直した方が良いこともある。例えば接客の仕方を変えるだけで売上が伸びることだってあるし、手描きのDMを送るだけで済むこともある。様々な要因と状況が複雑に絡み合って起こっている現象、これらを解決する手段や方法、アプローチも、実は無限にある。というか、どの解決方法が最善かを考えることが大切だと思います。そして、デザイナーはその解決方法を提示することが求められているのだと思います。

デザインは問題解決のためのひとつの方法であり、その仕組やルールを作ることがデザインの本質だと考えます。ビジュアルや形は、それらのコンセプトが表面上に現れるひとつの部分でしかありません。


いつもより少しトーンが硬くなったけど、企業・商店・商品・ブランド・イベントなどなど、あらゆるものをデザインすることで、何かを作る・変えるためには、何が必要で何が大切なのか、どうしていきたいのかというストーリーがないと薄っぺらい直ぐに消えてしまうものになると思います。


本来デザインとは、設計や計画を意味する言葉なのだから。


そういう意味では、2020年の東京オリンピックは現在準備段階ですが、日本人全員が共有できるストーリーがまだ無いのかも知れませんね。なんとか皆が希望の持てる、そして誇りを持って開催できる、世界中の人々をお迎えできるような大会になれば良いですね。



※写真は「モンセン・スタンダード欧文清刷集」。今では見かけなくなりましたが、僕がデザイナーになりたての頃は、これをトレースしてロゴを組んでいました。様々な書体を知ることになり、またこれをトレースしまくることで、文字の成り立ちや形の意味、バランスや空間など、とても勉強になりました。

下記に書籍の紹介をしていますが、デザイナーを目指す学生さんには特におすすめです。プロの方にもおすすめします。

 

フォントのふしぎ  ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

 

 

台風と祇園祭

 

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7月16日は、宵山です。そして、明日は前祭山鉾巡行ですが、どうも台風が直撃するようです。明日の朝5時30分までに中止かどうかが決まるようです。僕の記憶では、山鉾巡行が中止になったことはありませんが、調べてみたらありました。

直近では、四条通の地下で鉄道延伸工事があった1962年。まだ僕が生まれる前です。そして、悪天候が理由で中止になったのは1884年とのことです。その前になると「太平洋戦争(1941年〜)」、もっと前になるとなんと「本能寺の変(1582年)」とのことです。京都の人は「先の大戦」というと「応仁の乱(1467年)」を思い浮かべるという笑い話があるほど古い町なんですが、明日は山鉾巡航が延期になったとしても、台風で鉾が倒れたり、ケガをする人が出ないように祈ります。


さて台風といえば、昨日国会で法案が成立した「安全保障関連法案」。国会は大荒れでした。政治家だけでなく、憲法学者軍事アナリストなどからも様々な意見があり、国民の間でも賛成・反対真っ二つに分かれました。テレビや新聞の報道では、反対派の声が多かったように見えましたが、僕は賛成です。元々分かりにくい憲法を、解釈という捉え方で如何様にも変えられる状態よりも、誰が読んでもはっきりと理解できるものにする必要があると思うからです。


そして、与党や野党の言い分、国会内外でのやりとり、質疑応答の内容、審議時間など、どれも十分という感じはしなかったのですが、それはこの法案が「この国の先行きや僕達の未来まで変わる可能性があるかも知れない」というとても重要な決断を迫られるものだから、余計にそう感じたのではないかと思います。いくら審議しても、おそらく全員が納得できるものではなかったと思うし、消費税を上げることや高速道路を作ることなどといった法案よりも、何倍も慎重を期するものだとも思います。

で、一般的な国民は賛成派・反対派ともにですが、ちゃんとこの法案を自分自身で読んだ上で、自分の意思表示をしているのか?ということがとても気になりました。


こんな話があります。

沈没しようとしている船から脱出する際にボートが足りない時...

アメリカ人には「今飛び込めば、あなたはヒーローになれますよ」と言い、
イタリア人には「海に美女がいますよ」と言い、
フランス人には「決して海には飛び込まないでください」と言い、
イギリス人には「紳士はこういう時に海に飛び込むものです」と言い、
ドイツ人には「規則ですので海に飛び込んでください」と言うと。。

そして、日本人には「みなさん飛び込まれましたよ」と言えば良いとw


新聞やテレビなんかが信用できない、かと言ってネットに流れる情報も定かではないとなれば、やはり自分で色んなことを見て聞いて、調べて判断するしかないと思います。先ほどのジョークのように、「みなさん反対(賛成)されてますよ」的な空気感で動いてしまうことが一番危険なように思います。

そして、この法案が衆議院を通過したのは、政府与党の数の暴力でも強硬採決でもないと僕は考えます。その過半数を与党に与えたのは、他ならぬ僕達なのですから。自分たちで選んでおいて、その代表である議員が議会を通して決めたことは、すなわち僕達の意見でもあるということです。

だから選挙には必ず行って、ちゃんと考えて投票しないといけないと思うのでした。色々とモヤモヤすることはありますが、それがルールだし、それこそが民主主義なんだろうと思います。ちなみに選挙権を得てから、棄権したことは一度もありません。


ということで、今夜はこの台風の中、宵山に行くのはやめておきます(笑

 

 

安全保障とは何か (シリーズ 日本の安全保障 第1巻)

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祇園祭のひみつ―コラムとクイズで解き明かす (月刊京都うんちくシリーズ)

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いのちをいただく 自然とデザイン 〜岡山県西粟倉村 森の学校〜

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岡山県西粟倉村にある「森の学校」。いつも仲良くしていただいてる方に誘われて、自然を満喫。森の学校長である牧さんのアテンドでプチ野人体験の巻。

少し前からその存在は知っていて、どういう取り組みなのかもほんの少し知っている。そして、なんとなく面白いことをされてるなぁと、そんな軽いノリで校長である牧さんにお会いして、西粟倉の良いところをビュッとご案内いただきました。

とは言うものの、僕は「美味しい天然鰻が食べられるからおいで〜」ということでついていったのが正直なところです(笑

f:id:gridGraphic:20150715112107j:plain本当の学校を改装して使用されています。



自然の中で、自然体に

まず「西粟倉」は遠いイメージがあったんだけど、京都から車で2時間半程度と意外に近いことを知りました。そして町中に住んでいると忘れている、たくさんの自然にテンションも上がりっぱなしなのでした。木々や田んぼの田園風景は京都市内でも少し離れればあるはずなんだけど、やっぱりなんか少し違う気がします。

まず、カエルが多い!
オオサンショウウオがすぐ側の川にいる!(らしい。今回は見られませんでした)
でっかい天然の鰻が捕れる!(今回チャレンジするも釣果ゼロ)
鹿や猪、熊が普通にいる!

これだけでも、ワクワクの世界です。
京都は祇園祭もはじまって蒸し暑くてたまらないんですが、西粟倉はエアコン要らずで少し肌寒いくらいでした(日中はやっぱり暑いんだけど)

ということで、捕れたての猪や鹿、鰻をこれでもかっ!と戴いてまいりました。(ちゃんと許可を取った猟師さんと、調理できるプロに作っていただいております)

f:id:gridGraphic:20150715112305j:plain水が豊富

f:id:gridGraphic:20150715112324j:plainまさに森

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f:id:gridGraphic:20150715112452j:plain数えきれないほどのカエルくんたち。まだしっぽが残ってる



チカラが強すぎる

天然の鰻(60cmくらいはあったかな?)や子鹿、猪など西粟倉で捕れたものを食べながらその土地の水や米や野菜をご馳走になるという、贅沢にして豪華な時間。そして楽しい会話で酒がすすみまくったのは言うまでもありませんw

普段食べているものの場合、「いただきます」→「美味しい!」→「ご馳走様」となるのですが、今回は「いただきます」→「美味しい!」→「ご馳走様」→「闘ってる」という感じなのです。食物を消化するという自然な行為(特に意識しないもの)を意識するレベルの何かが生じていました。内蔵や身体の細胞が取り込もうとしたり、何かに反応しているような感じを受けました。そして、僕の場合は満腹でしんどいと言うよりは、食べることがそのまま運動しているような感覚になりました。

これが「命をいただく」と言うことなのかと、ひとり色んなことに感謝し、命の濃さのようなものを感じたのでした。上手く表現できているか心配ですが...

f:id:gridGraphic:20150715112202j:plain近くの川で捕れた鰻を蒲焼きに... 旨すぎる

f:id:gridGraphic:20150715112526j:plain新鮮なバンビちゃん。とても柔らかくてジューシー

f:id:gridGraphic:20150715112543j:plainこちらはイノシシくん。臭みもなく、美味しい



表情が豊か


「森の学校」は、正式には「株式会社 西粟倉・森の学校」という法人です。色んな事業や取り組み、挑戦をされています。詳しいことは、ホームページをみていただくとして、今回は森の学校が運営(経営)する製材工場や制作されているプロダクト商品を見せていただきました。

それぞれ試行錯誤しながら、とても苦労してたどり着いたんであろうことが何となく分かりました。作るもの、作る人、使う人、地域・環境など、様々なことに思いを馳せ、そして考えて工夫されているのがとても勉強になりました。何より働く人の表情が良いなぁと思いました。イヤな感じがないんです。少し偉そうな言い方になってますが、気持良かったのです。

デザインも同じですが、想像力が豊かで色んな事を感じ取ることができると、新しいものを創造していくことができるんだなぁと改めて思ったのでした。

もう一度行ってみたい場所、もっとお話してみたい人たちとの出会いでした。いろんなことに感謝する短くて濃い旅でした。西粟倉村、森の学校の皆さん、牧さん、ありがとうございました。誘ってくださったF田さん、ありがとうございました。また行きましょう!

 


そうそう。スイカがめっちゃ甘くて大きいのです。ひとつ7kgはあるかと思うスイカが、なんと3,500円。交渉次第では、もっとお安くなるようです。「あわくランド」の向かい
の果物屋さんなので、ぜひ!ただし、試食も値引きも女性限定(笑




岡山県西粟倉村  http://www.vill.nishiawakura.okayama.jp/

株式会社 西粟倉・森の学校  http://nishihour.jp/

ニシアワー  https://www.facebook.com/nishihour

 

f:id:gridGraphic:20150715112643j:plain熊が出ますw