デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

ほんとうに必要なもの 〜それってデザインする必要ありますか?〜

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ロゴマークっぽくお願いします」
「シンボルマークとか欲しいよね」


「っぽく」や「とか」って何だろうか?

そして、何でもかんでも直ぐにロゴタイプやシンボルマークを作りたいとのお話を聞くけれど、それってほんとに必要なんだろうか。

なぜ、今ロゴをリニューアルする必要があるのか。
なぜ、今シンボルマークを新たに作る必要があるのか。

それらを新しくデザインすることで得られるものと、そして新しくすることで、捨てなければならないものがあることを考えたことがあるのだろうか。



例えば、パンフレット作りたいとの依頼。パンフレットに載せたい具体的な内容やイメージなどは当然として、僕が一番知りたいのは「なぜ今パンフレットを必要と考えたか」ということと、「パンフレットで何をしようと(何を得ようと)しているのか」だったりしする。

そういう視点で話を聞いていくと、その依頼主には必ず困っていることがある。「商品が売れない」や「ブランドが認知されない」など。

それらの問題を解決するために「パンフレット」を作ろうという結論を下されたようだけど、ここでひとつ問題がある。それは「本当にパンフレットがそれらの問題解決に有効なのか?」ということ。おそらく依頼主は、同業他社や知り合いや色んなネットワーク、情報から漠然と「パンフレットが有効なんじゃないか」と考えたはず。

しかし、問題を解決するにはもっと簡単で、もっと有効なことがあるかも知れなくて、逆に根本から考え直した方が良いこともある。例えば接客の仕方を変えるだけで売上が伸びることだってあるし、手描きのDMを送るだけで済むこともある。様々な要因と状況が複雑に絡み合って起こっている現象、これらを解決する手段や方法、アプローチも、実は無限にある。というか、どの解決方法が最善かを考えることが大切だと思います。そして、デザイナーはその解決方法を提示することが求められているのだと思います。

デザインは問題解決のためのひとつの方法であり、その仕組やルールを作ることがデザインの本質だと考えます。ビジュアルや形は、それらのコンセプトが表面上に現れるひとつの部分でしかありません。


いつもより少しトーンが硬くなったけど、企業・商店・商品・ブランド・イベントなどなど、あらゆるものをデザインすることで、何かを作る・変えるためには、何が必要で何が大切なのか、どうしていきたいのかというストーリーがないと薄っぺらい直ぐに消えてしまうものになると思います。


本来デザインとは、設計や計画を意味する言葉なのだから。


そういう意味では、2020年の東京オリンピックは現在準備段階ですが、日本人全員が共有できるストーリーがまだ無いのかも知れませんね。なんとか皆が希望の持てる、そして誇りを持って開催できる、世界中の人々をお迎えできるような大会になれば良いですね。



※写真は「モンセン・スタンダード欧文清刷集」。今では見かけなくなりましたが、僕がデザイナーになりたての頃は、これをトレースしてロゴを組んでいました。様々な書体を知ることになり、またこれをトレースしまくることで、文字の成り立ちや形の意味、バランスや空間など、とても勉強になりました。

下記に書籍の紹介をしていますが、デザイナーを目指す学生さんには特におすすめです。プロの方にもおすすめします。

 

フォントのふしぎ  ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

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