デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

ボールの話

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人生で最初に買ってもらったのは、バットとグローブ

小学生の時、一番最初に父親に買ってもらったのが赤いバットとグローブ、軟式の野球ボールでした。

僕が小学生の頃は、将来なりたい職業の第一位が「プロ野球選手」で、当時は王、長嶋がONコンビとして現役バリバリで、後に王さんがハンク・アーロンメジャーリーグ通算本塁打(ホームラン)記録の755本を抜いて、シーズン公式戦通算本塁打868本という偉業を達成し、関西でも読売ジャイアンツのファンが結構居た時代。男の子は、野球とプロレスとスーパーカーに熱中し、僕もジャイアンツカードなんかを集めてたりして、弟と並んで撮った写真は、僕がジャイアンツで弟がタイガースのキャップを被っていた。

そんな昭和の時代なので、だいたいの家庭では男の子はバットとグローブを買ってもらい、ドラえもんでみる光景のように、放課後には近所の空き地に集まって野球をする毎日だった。うちは野球嫌いで極真空手とボディビルを愛する父にも関わらず、近所の友だちと付き合えるようにバットとグローブを買ってくれて、休日にはキャッチボールにも付き合ってくれた。

なぜ赤いバットを買ってくれたのか、それは母が教えてくれたのだけど、巨人の川上哲治氏が赤いバットを使って居たからということで、僕はよく川上氏を知らないんだけど、父はどうせ野球をするなら川上哲治氏のようになって欲しいと思っていたらしい。

結局、小学生3年から、これも父の希望で剣道をはじめ、野球はその後まったくやらずに、どこかの熱烈なファンになることもなく現在に至るんだけれど。

 


ということで、今日はボールのお話。
フリーランスデザイナーとして、いつも心掛けていることを少しだけ。

 


デザイン以外の力と技術

僕の場合、フリーランスとして仕事をするなかで、多くの場合が中小企業や個人商店で、仕事の相談や依頼があっても、その依頼者から明確な資料や原稿が完璧な状態で渡されることは殆どありません。ヒアリングを繰り返して、聞き出して、手探りで真意を図り、場合によってはその会社が何をしたいかすらも提案することもあるくらい。

そういう場合、大体はこちらの希望や欲しい情報などを依頼者に伝えて、それらが出てくるのを「待つ」ことになります。そして、広報や宣伝部、企画室などある企業ならしっかりと情報が整理されて提供・支給されるんだけど、中小の場合は技術部門の人が広報を担当していたり、社長が企画をしていたり、営業も兼務していたりと、デザイナーが待ってても期待するような資料など出て来ずに、結局良くわからないままに進めてしまうなんてことがあるはず。

で、結局双方ともに消化不良、不完全燃焼で「?」な感じになってしまったり、クライアントは「なんか違う」とダメ出しをしたり、デザイナー側は「もっと情報をくれれば、もっとよく出来たのに」なんて思ったり。。


これって、良いことなんだろうか。
プロだから与えられた条件で、最良のものを作るのが当たり前では。。

などと思うけれど、その「与えられた条件」や「情報」をもっと引き出せていたら、できることは増えるはず。

ということで、フリーランスは、まず「聞き出す技術」が大切になってくる。そして、それらの聞き出した情報を、その会社の企画・広報の人間になった気持ちで「情報整理」する。そして、最も有効と思われる方向と方法でアウトプットする。

それは、依頼者(クライアント)が作りたいと最初に相談してきた媒体やツールでは無いかも知れない。けれど、その会社やお店のために今、最良の提案をする「話す技術」も必要になってくる。そういう「デザインのまわり」の技術や知識、力もフリーランスには大切な、備えておくべき武器だと思います。

 


すべての仕事をなくして気づくこと

これらのことをスムースに、そしてスピーディに行うために、会話やデータのやり取りが必要になるけれど、これを僕はボールのやり取りで例えています。一回の質問や受け答えを1ターンとして、ボールを投げて、そして受け取る。

デザイナーが質問なり要望を伝え(ボールを投げ)て、その返事(ボール)がまた返ってくるんだけど、できるだけボールは向こう(依頼者=クライアント)に預けておく。というか、デザイナーがボールを持つ時間を最小限に詰め、先方には考えたり何かをする時間を最大限与える。そうすることでプロジェクト全体の進行が早くなるし、そして出てくる情報も増えて、デザインする際の選択肢も増えるし正確さもアップする。何よりも依頼者の印象が良くなる。(←ここ大事)

一番ダメなのは、忙しさのあまりお尻に火がつくまで作業できないこと。どちらかと言えば、クライアントに「アレ、どうなってますか?」などと言われることがあるというデザイナーが実は多いと思う。僕も最初の頃はそうでした。だって忙しいし、ひとつのクライアントの仕事だけをやってる訳じゃないんだから。

でも、クライアントにとっては、唯一頼んでるのは僕だけだし、頼りにしてくださっているのだから、口が裂けても「お宅の仕事だけをやってるんじゃないんです。もう少し待ってください」などと言わないこと。すべての案件を全力で、持てる力のすべてを使って絶対良くするという気持ちで取り組む。明日、死んでも構わないというくらいに。

(僕は一度、すべての仕事失ったことがあります。本当にあの思いは二度としたくない...)


ということで、クライアントとのやり取りをボールのやり取りに例えましたが、相手とのやり取りや情報交換が増える(増やす)ことで、よりクライアントのことも、商品のことにも理解が深まるし、そうなることでまた違う角度での提案や新たなアイデアも浮かぶし、それらがすべてクライアントのためになれば、結果的にデザイナーとして次の仕事も増えることになるんだし、すべて上手く行く気がします。

根底にあるのは、「自分のデザインで誰かの、何かの役に立ちたい」ということに尽きます。そのためにフリーランスになったんだし。



他のフリーランスデザイナーにとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
今回もちょっと長い文章になったけれど、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

グリグラでした。

 



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