デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

最新式が最強で万能とは限らないんだな

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これは僕が13年前に独立した時に最初に買った“ILLUMIX”。
ライトボックス(透過台・トレース台)と言って、主にポジフィルムを見るための必需品だった。他にも下絵をトレースしたり、マークやロゴを描き起こす時には必要なものだった。

これが事務所にあるだけで、なんだかプロっぽくて「仕事するぞ〜!」って気分になったんだけど、今は殆ど使うこともなく事務所に置いてある。



この「デザインの余白」は最初「ロットリングと三角定規」というタイトルだった。そのロットリングや三角定規と同じくらい、この“ILLUMIX”も使わなくなったよね。
と言うよりも、「ポジフィルム」がプロの現場から消えつつある。カメラマンも殆どがデジカメで撮影し、データ化してるし。。



写真のデータ化によって画質も仕事の上でのスピードも上がって、データのやり取りも簡単になり、物理的な場所も居らない。ラフを作るのにも一々スキャニングしなくて良いし、極端な話、色調整もしなくていい(カメラマンがやってくれている前提だけど)。


デザイナーとしての初歩的な手間はかなり軽減されたんだけど、根源的で最も難しい問題が実はある。そして、それをみんな知ってるんだけど、何となく分かった風になっていること。



それは、誰もがその写真の本当の色や質感が分からないってこと。



これかなり重要なんだけど、何となくそのままになってる。
「ポジ」ならクライアントもカメラマンもデザイナーも印刷会社も全員がその「ポジ」の色を認識できる。


現物があるから。。



でも、「画像データ」になってからは写真は「データ」なので、「モニタの中だけ」のものになり、最終的なプリントとして出力をしないと誰もが同じ条件で見ることができない。

モニタも千差万別、今やスマフォやタブレットでその「画像データ」を確認する人もいれば、iMacで見る人もいるし、ナナオの高精細モニタで見る人もいる。ちゃんとキャリブレーションを掛けたモニタもあれば、市販のままのものもある。


要するに「画像データ」を見る環境、ツールによってその色味や写真のクオリティまで大きく変わるということになるのだ。

ビジュアルを考え、その色味や質感、クオリティにこだわっていたことが、データ化し高精細化することで、逆に曖昧にせざるをえないことにみんな気づいてるのだろうか。。



難しいとか、おかしいとか、そういうことを言いたかったんじゃないんだな。

ふと思い出したこの“ILLUMIX”を見て、データやなんだ、便利になったと言いながらも、僕は最後の最後は手で描けばいいし、データやPCなど無くてもデザインはできるんだな!



と言うことを思い出したのでした。

 

 

口紅から機関車まで―インダストリアル・デザイナーの個人的記録

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