デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

ポラの隙間

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スマートフォンで写真を撮ってすぐにTwitterFacebook、ブログにアップして世界中の人と共有する... 今や普通のことですね。僕も自分の食べたものや訪れた場所、何気ない日常の風景なんかをパシャパシャ撮ってはアップしています。少し前まではデジカメで撮ってパソコンに取り込み、そこからアップするという、少しだけ手間の掛かる作業でしたが、今やその場で瞬時にアップできます。 凄い時代です。

 

昔はPCもデジカメも携帯すらもなくて、モニタで撮った写真を確認することなんて出来ませんでした。フィルムで撮って、現像が上がってはじめて写真を確認できました。。

そして、プロの現場でもポジが上がるまでは、どういう風に写真が撮れているかなんてわかりませんでした。それこそカメラマンやデザイナーの経験と勘。。上の写真は、今では珍しい「ポラ」ことポラロイドカメラで撮ったものを僕がデジカメで撮ったものですw

なんか変な感じですが数年前にスタジオで撮影した際に、もうポラを見ることも無くなるかも知れないと思って撮ったものです。4×5(シノゴ)のポジ撮りで、蛇腹のカメラも普通の人は見たこともないかも知れません。。

 

このポラは写真の仕上がりを確認するためのもので、これを見てディレクターはカメラマンに微調整をお願いしたり、OKを出したり、デザイナーはレイアウト上のトリミングが出来るかどうかなどを確認していました。

 

 

「テストいきます!」とか「ポラ切ります!」といったカメラマンの声で、音声は写真に反映されないのにも関わらず、シーンと静かになるような緊張する瞬間でした。そして、「カシャッ」というシャッター音の後、暗かったスタジオが明るくなり、カメラマンがもみ手をしながらこちらに向かってくるのです。。(実は「もみ手」ではなく、撮ったポラロイドを両手で温めているのですが... 怖かったカメラマンが一瞬可愛く見える瞬間ですw)こうすると体温でポラが若干早く出来上がる(定着する)ということなのですが、本当かどうかは定かではありませんw

 

 

一旦撮ったポジ(写真)は、今みたいにモニタで確認してダメなら消して撮り直すなんてことはできません。現像が上がって何か不具合があった場合は、現場に立ち会ってディレクションしたデザイナーの責任になります。「再撮」は最も避けたいことの一つでした。

 

カメラマンにも1カットごとにギャラが発生(契約によりますが)し、ポジ1枚にも現像代やフィルム代が掛かります。当然ポラにも費用が掛かります。(確か1枚300円だったかな?)これらすべて費用が掛かるのです。

撮影を任されるようになると自分の世界観やデザインをダイレクトにカメラマンに伝えることができる喜びでいっぱいになるのですが、同時に大きな責任も背負うことになるのです。。また、撮影現場にはカメラマンだけでなくクライアントやスタイリスト、コーディネーターなど様々な人が集まります。この多くのスタッフとのコミュニケーションや会話も大切で重要な仕事でした。

 

撮影の現場は大勢のプロが集まる空間です。その緊張感はハンパないものがありましたが、ポラを切ってから出来上がるまでの「隙間」のような時間が、ピーンと張り詰めた空気のスタジオでは少しホッとできる、僕にとっては楽しい時間なのでした。。

 

 

ディレクションをするということは、何かを表現し、伝え、まとめ上げるということなのですが、ディレクター(デザイナー)の一番大きな仕事は、大勢のスタッフやクライアントにたいして「責任」を取るという事なのです。。

 


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