デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

京都市長選挙から、選挙の仕方について考えてみた

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2020年1月19日 京都市長選挙が告示された


京都市長候補は3名


京都市長選挙が1月19日告示、2月2日投開票ということで始まった。
2週間の選挙戦。

今回の候補は3名

門川大作氏(かどかわ・だいさく 69歳):現職、公明、自民府連、立憲民主府連、国民民主府連、社民府連推薦

●福山和人氏(ふくやま・かずひと 58歳):弁護士、共産、れいわ新選組推薦

●村山祥栄氏(むらやま・しょうえい 41歳):市議会議員

いずれも「無所属」となっているけれど、門川さんと福山さんは既存政党の推薦は受けてるし、当選後も何らかの党と協力関係になるはずなのに無所属って意味がわからない。また村山さんは京都党の代表を辞任して離党したということらしい。京都のための政治をすると言い続けてきた人だけに、その離党にどのような意味と覚悟があるのかわからないんだけれど。
まあ、市民に対して「どこかの政党のための政治はしません」というイメージ持たせたいとうことなのだろうか。

各候補の掲げる政策や主張については、それぞれのWEBサイトなどをご覧ください。

門川大作オフィシャルサイト
http://www.kyoto-daisakusen.jp/
門川大作 Twitter
https://twitter.com/miraikyoto2020

福山和人オフィシャルサイト
http://www.fukuyamakazuhito.jp/
福山和人 Twitter
https://twitter.com/kaz_fukuyama

村山祥栄フィシャルサイト
https://xn--n8jdg2dtn022v15p.com/
村山祥栄 Twitter
https://twitter.com/sho9722483



盛り上がらない京都

で、今回の京都市長選挙は重要な選挙ではあるんだけれど、京都は選挙が盛り上がらない。京都に生まれ育ち、選挙権を得てから30年以上経つけれど、盛り上がった試しがない。ま、何をもって盛り上がってると言うのかは疑問だけれど、京都は割と大きなイベントでもそれを市民が知らない内に終わってるみたいなことがよくある。行政の告知が内向き(市民へ向けたもの)ではなくて、市外(東京方面など他府県)に向けて展開されているからではなかろうか。

門川さんの4選目となるのか、それとも新人が勝つのかという見方をすると面白くはあるけれど、今日は京都市長選挙の話ではなく、「選挙制度」のお話。

告示から投票までは、2週間。この間に候補は事務所を拠点にスタッフと共に車に乗って選挙区内を縦横無尽に移動し、声を枯らして政策などを訴え、そして手が擦り切れるほど人々と握手して回る。うぐいす嬢の「京都市長候補◯◯でございます。◯◯が京都を変える、明るい京都市政を◯◯が実現します。」などと、まずは名前を覚えてもらうために比較的指名を連呼する形がメインとなる。
ひと昔前に比べると、演説会を開催したり、WEBサイトでしっかりと政策を伝えたり、Twitterでつぶやいたり、今どこで演説しているかなどリアルタイムで見えるようになった。

とは思うけれど、選挙の度に思うことがあって、もしそれを実現してくれる政治家がいるのなら応援したい。



選挙の仕方が時代とズレてる

候補者は、選挙管理委員会や法律の定める範囲で選挙戦を戦っていると思うので、やはり選挙制度を改革して欲しい。これは京都市だけの話ではなく、国会議員も含めてすべての「選挙のやり方」を見直し、変えていただきたいなと。

現在の選挙は、各候補のオフィシャルサイトや個人アカウントのTwitterなどを僕たちが自らが追ったり、遊説を見に行ったり、テレビなどのメディアなど注意深く見たり読んだりしないと候補者の考えや人となり、政策などはっきりと理解できない。かなり強い意志と好奇心、探究心、政治への関心がないとそんなことは中々できない。
なので、未だに選挙ではアホみたいに候補者の名前を連呼するだけか、キャッチーな言葉と名前を訴えるだけの選挙戦となっている。あとはイメージづくり。

ほとんどの人がたった2週間の、ほんの少しの時間、どの候補に投票すべきかを決定するために、たまたま手にとった新聞などの記事で決めている気がする。

今やテレビやラジオを見聞きし、新聞を読むのは年齢の高い人で、その年代の人の数が圧倒的に多いとは言え、視聴率や購読者数などは年々減少しているので、有効かどうか甚だ怪しい。新聞に広告を掲載しても、その地域で購読してる人の数は大凡分かるけれど、本当に読んだかどうか、その広告を見たかどうかなどはまったく分からないのである。よく今までそれで成り立ってきたなと、永年広告の世界で仕事をしてても思うけれど。



選挙制度(投票のための仕組み)は、こんなのが良い

1)選挙管理委員会は、すべての立候補者の情報を均等に偏りなく特設サイトに公開する
2)氏名、経歴、所属政党、後援組織、掲げる具体的な政策を掲載する
3)各候補のオフィシャルサイト、SNSアカウントなどもリンクする
4)選挙期間中、候補者が訴えたいことがあればリアルタイムで更新可能なページも設置する
5)PC、スマートフォンなどツールを限らず、誰でも閲覧できるものとする

上記のようなWEBサイトが選挙管理委員会の管理の元で公開すれば、そのサイトさえウォッチすれば誰でも公平に選挙で投票するための情報を等しく得ることができると思う。

その上で、

6)投票はネットからでもできるようにする
7)投票結果(集計)はリアルタイムでネット公開する



ものすごいお金を掛けて構築した「マイナンバー制度」をここでぜひ生かして欲しい。ネットからログインしてマイナンバーを入力して、そのまま投票できることになれば、投票率も爆上がり。セキュリティの問題は若干あるけれど、投票率が上がるというだけで政治家は根底から普段の活動の仕方、考え方など見直さないといけなくなるし、政治団体・政党も意味合いと役割が変わってくる。地方組織も変わるはずだし、何よりもなんの縁故も利権も金も持たない人でも立候補が可能になる。今よりも遥かに。

ついでに、北欧のように自宅のPCから住民票や戸籍謄本などの「判子を持って役所へ行かなければならない書類関係」をすべて自宅で入手、プリントアウトできるようになればかなり無駄が省けるし、他府県への転入や転出、婚姻届なども電子化して自宅にいながらネットで終わらせることができれば仕事の合間にでも可能になる。

少子化対策も同じなんだけれど、物事の本質を見ずにやるべきことをどっかに置いといて、何やら変なところに話が持っていかれることにとてもストレスを感じる。仕事でもそんなことあるよね〜。

と、こういう仕組みを考えることもデザインの一部だと思うので、政治の世界に飛び込んで改革するデザイナーが出ると良いなぁと思うのです。


さて、2週間後は誰が京都市長になってるんだろうか。
京都市が全国に先駆けて、ネット投票とかやってくれんかな。
新市長へプレゼンに行こうかな(笑

 

なにより、京都市民の皆さん。必ずこの京都市長選挙は投票してくださいね。前回の投票率は35%だったとか。しっかりと権利を行使しましょう。

 

 

世界の選挙制度

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今さら聞けない!政治のキホンが2時間で全部頭に入る

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解体され消失していく京都の町家

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僕の事務所は、所謂「京都のまちなか」にある。御所近辺や北の方の「京都人」からすると、ギリギリまちなかと言われる五条なんだけれど。僕は伏見稲荷で生まれ育ったので五条でも十分まちなかで、今でも「町家」がたくさん残ってる。


そんななか、この数年流行っている「インバウンド」とやらで外国からの観光客が激増し、ホテルやゲストハウスというものがあっという間に増えた。僕の事務所がある町内は、五条通から万寿寺通までのたった70〜80メートルほどの通りで、戸数にして20数軒しかない小さな町内。マンションとアパートがあるから、実際に住んでる家はもっとあるけれど、それでも50軒もないはず。

その町内に、この数年でゲスハウスが3軒、ホテルが1軒建った。そして今年に入って、老舗の鰻屋さんが廃業して更地になり、今またその向かいの町家が更地になろうとしてる。おそらくその2軒ともゲストハウスかホテルになるのだろう。

最近落ち着いてきたとはいえ、京都はプチバブル。場所にもよるけど、50坪ほどの土地が数億円になるとの噂もあり、維持にお金が掛かるから高いうちに売ってしまえという空気が無いこともない。高齢化でお年寄り一人になった町家をこの先誰が管理していくのか、家賃は無くとも維持するにも費用は掛かるし、家を継ぐべき子どもたちは遠く離れて暮らしている。。時代の流れで仕方のないことなのかも知れないけれど、なんだか寂しい。

去年も京都で最古級の町家が消失したという記事が出ていた。 

www.kyoto-np.co.jp


この10年ほどで6,000軒近い町家が取り壊され、消失したという話もある。。


町家を取り壊してホテルになったり、ゲストハウスになるのは百歩譲って良いとして、ペカペカのもっさい建築物があふれるのが気になる。景観条例とか御大層で面倒な条例を持ってるのに、建物の高さとか色とかだけにうるさく、その建築物のデザインや使用する素材、周りとの協調性などはあまり規制されない状態がもう数十年も続き、ヨーロッパの古い町と同じように歴史のある京都の町が、それら海外とは次元の違う理屈で安物の上辺だけの景観にされ、ちぐはぐなパッチワーク状の町になってしまっている。

そして、今また「インバウンド」の美名のもと、町家を解体は続いている。京都市も宿泊税みたいなことをするなら、町家を解体しないで済むように助成するとか、それでも宿泊施設を作る場合は特別高い税を課すとかやるべきことはあるはずだと思ったりする今日このごろ。

100年、200年という間、残されてきたものを1週間程で壊して、ひと月程で建ててしまう。もっと時間を掛けて考えることもあるだろうし、それだけの覚悟を持ってお金を掛ける必要もあるだろうにと思う。

どうせ壊すなら、ちゃんとしたものを作ってくれ。 ほんまに。

 

京都の町家を再生する

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京町家拝見 (SUIKO BOOKS 161)

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五条の陶器祭りと六道まいりから東京オリンピックで佐々木宏氏に注目したいけど、ザハ・ハディド氏のスタジアムも見たかったなと

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京都は五条坂で「京都・五条坂〜陶器まつり」が始まった。地元民は「陶器市」と呼ぶこの祭は、五条坂五条通の川端から東大路までの間)に京都の陶器屋さん、陶芸家、工房などが仮設のお店を出して、五条通が陶器の市場になるイベント。まぁ、毎年この陶器市は暑いんだけど、同時に「六道まいり」(六道珍皇寺)も行われ、京都人にとっては「ああ、墓参り行かなあかんなぁ」と思う季節。

しかし、今年は暑いね〜。

再来年の東京リンピックでサマータイムの導入や甲子園でや高校総体の開催時期などが取りざたされるほど、この暑さが問題になっている。高校野球は夏休みでないとこれだけの大きな大会が開催できないという理由が分からなくはないけれど、ナイターにするとか東京ドームで開催するとか、東北や北海道の球場で開催するなど方法はあるように思う。オリンピックもそうだけど、スポンサーや放映権の都合で開催日時が限定されてしまうとも言われてる。もはやアマチュア精神に則った平和の祭典ではなく、商業主義に則った興行であることは、みなが気づいていることでもあるんだけれど。ただ、建前上はスポーツの祭典、平和の祭典ということなので、せめて商業至上ではなく、選手至上のアスリートファーストであって欲しいものだなと。

ということで、東京オリンピック 2020。
先日、野村萬斎さんが開会式演出の総合統括に就任ということで期待が高まる訳ですが、僕としてはパラリンピック担当の佐々木宏さんが何をされるのかが気になってる。佐々木宏さんを知らないという方は、こちらのWiki(佐々木宏:クリエーター)をご参照ください。元電通でコピライター、クリエイティブディレクターとして様々な仕事をされ、ADCやTCCに始まり、カンヌ広告賞、ほか主要な広告賞を多数受賞というスーパースターで、今も第一線で活躍されています。2020年は、オリンピックも楽しみだけど、いつも以上にパラリンピックにも注目したいと思います。

と言いながら、オリンピックエンブレムとメインスタジアムでケチがついたスタートとなり、今もいろいろと問題が指摘されて間に合うのかとまで言われてるけど、ロシアやロンドン、北京の各オリンピックも間に合わないと言われながらも盛り上がってちゃんと成立したことを考えると、2020年の東京オリンピックも必ず成功するとは思います。たぶん。知らんけど。。

僕としては、ザハ・ハディドさんがデザインしたスタジアムで良かったと思うんだけどなぁ。結果的に費用も変わらないようだし。もしできていたら、ザハ・ハディドさんの遺作となっていたかも知れないし。ああ、見たかったなぁ。

 

佐々木宏 (世界のグラフィックデザイン)

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新訳『ドラえもん』

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「広告」がスラスラわかる本―60分で知ったかぶり! (DO BOOKS)

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祇園祭 花傘巡行が猛暑で中止されたということで、ちょっと遡ってみた。

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祇園祭の後祭「花傘巡行」が中止になったということで、調べると869年(貞観11年)に始まったとされる「祇園祭」は、今年で1149年も続いています。その長い歴史のなかで、祭(巡行)が中止になったのは実は数えるほどしかありません。

◯1962年(四条通の地下で鉄道延伸工事)
◯1941年(太平洋戦争)
◯1582年(本能寺の変
◯1467年(応仁の乱

すごい。なんか教科書で見た文字が並んでる。


ということで、3年前の大型台風のときに山鉾巡行が中止になるんじゃないかと言われた時にも記事を書いていました。

gridgraphic.hatenablog.com

 

 去年も祇園祭について書いてたりします。
併せて読んでいただけると嬉しいです。

gridgraphic.hatenablog.com

 
でも僕の知る限り、山鉾巡行神幸祭還幸祭で大雨や台風になったというのはあまりありません。かすめることはあっても、実施されるときは晴れてたりします。(ほとんど現場に見に行ったことはないんだけど)

しかし、今年の暑さは異常ですね。
京都は先週からずっと雨も振らず、37℃〜40℃近い気温です。元々、日本の天災、厄災を払い、国民の平穏無事を祈るための「祇園祭」。平成最後となる夏、このところ続く大雨や地震、日照りをおさめ、皆が安心して暮らせるように祈りたいと思います。


※トップの写真は、今年の前祭 山鉾巡行前の「薙刀鉾」です。




全然話は変わりますが、先日美人画家の鶴田一郎先生の個展に伺った時に、井上章一先生のトークイベントがありました。もう素晴らしく面白かったので、こちらの本を紹介しておきます。京都人(特に洛外出身の方:僕もですがw)は必読の書。
『京都ぎらい』と、その続編『京都ぎらい 官能編』です。「官能編」は必ず後で読むことをおすすめします。

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

 
京都ぎらい 官能篇 (朝日新書)

京都ぎらい 官能篇 (朝日新書)

 

たくらんときょうと

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カッコウは自分の巣で卵を温めずに、他のモズやホオジロオオヨシキリなどの巣に卵を産み付け、育てさせるという「托卵」という習性があります。カッコウの雛は、元のモズやホオジロたちの卵よりも早く孵化し、カッコウ以外の卵を巣の外に出して殺してしまいます。そして仮の親であるモズやホオジロからエサを独り占めして大きく育ちますが、仮の親はそのカッコウを自分の子供だと信じてエサを運ぶそうです。

京都ではないにも関わらず、京都発などと謳っていたり、京都以外に出店して住所だけ京都本店みたいなものが多い昨今、この話を何となく思い出しました。本物が静かに、そして上品に粛々と伝統を守り続けていいることを良いことに、大きな声で京都人には少し下品と感じるやり方で、京都を消費だけをしていく企業や人を見るにつけ、諦めと悲しい思いになりますが、この流れを止めるのはもはや不可能のようです。京都に店を構え、地域や人々に還元されるのであれば、それはひとつの潮流として歓迎すべきことだし、新しい物や事や人が集まることは喜ぶべきことですが、特殊な習慣や暗黙の了解などが多い京都に馴染むには、長い時間と気絶しそうな程の地道な努力が必要となります。たぶん。

京都に限った話ではないでしょうが、1年2年、せいぜい5年、10年のスパンで物事を捉え、結果を出し、費用対効果など数字で計るのはビジネスとしては仕方ないかもしれませんが、京都は百年単位、千年単位で結果の出る町だと思います。なにせ、京都の人に「先の大戦」と聞くと「応仁の乱」と答えるという笑い話があるくらいです。実際に「祇園祭」は1200年近く続く歴史がありますが、中止されたのは3回しかないと言われています。祭自体が中止になったのは「応仁の乱(1467)」一回だけで、山鉾巡行が中止になったのは「太平洋戦争(1941-1945)」と「阪急電車地下工事の影響(1962)」の二回だけ。なんとなく京都に流れている時間が桁違いなのを分かって頂けるでしょうか(笑

ということで、京都はすっかり秋。