デザインの余白

グラフィックデザイナーのひとりごと。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。

ディレクションってなんだっけ

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God is in the Detailes


最近タイムライン上で「ディレクション」という言葉をよく見かけるので、僕のディレクションというか仕事について少し考えてみた。

僕の仕事はグラフィックデザインをベースに、ロゴを作ったり広告を考えたり、DMや名刺やカタログをデザインしたり、商品企画したりもするんだけど、単発の仕事=例えば名刺だけを依頼されることは少ない。よくあるのは建築家や空間デザイナーが店舗やイベントの空間を設計・デザインする際にグラフィックを依頼されること。僕はそれらの案件を純粋なグラフィックデザインとは別に、空間を理解しつつサイン計画的な要素が大きいことから「インテリアグラフィックス」と呼んでいる。これは施主(空間の依頼主)からではなく、その空間デザインを依頼された建築家や空間デザイナーインテリアデザイナーから僕に依頼されるもので、そのプロジェクトが終わった後に、また別件として新たに施主から直接広告やグラフィックの仕事を相談される流れとなります。

そして、グラフィックデザインの分野で相談を受けながら、気がつけばそのお店のユニフォームから店舗のツール、広告、WEBサイト、果ては空間そのものまでデザインからディレクションをしていることが多くあります。基本的にグラフィックデザインは僕一人で完結する仕事で、ディレクションは社内外を含めたくさんの人と一緒にチームを組んで仕事を進める際のポジションと考えています。

ディレクション」とは、指導や監督、演出といった意味があると言われていますが、グラフィックデザインの業界では、現場監督といったところでしょうか。このディレクションにも「アートディレクター」と「クリエイティブディレクター」があり、ビジュアル面やデザイン的な表現を取りまとめる人がアートディレクター、元となる企画段階から作戦を練り、アートディレクターやグラフィックデザイナーへ指示・監督をし、他多くのスタッフを手配して予算についてもある程度管理する人がクリエイティブディレクターと考えています。これは一般的な認識だと思うのですが、間違っていたらごめんなさい。ま、お金を管理する人をプロデューサーというのでしょうが、グラフィック業界でこの肩書をあまり見かけないので、CD(クリエイティブディレクター)が兼ねているとします。広告代理店にはプロデューサーの肩書を持つ人も居ますが。

ということで、ざっとディレクターの仕事内容をざ書きましたが、そういう仕事の守備範囲(職能)で考えると、僕はグラフィックデザイナーでありアートディレクターであり、クリエイティブディレクターでもあります。なので、肩書は「グラフィックデザイナー&ディレクター」としています。若い頃はアートディレクターという響きに憧れたけれど、実際に仕事をする上ではどうでも良いなぁと、今では思います。肩書で仕事してる訳じゃないし、どんな肩書であっても、また肩書が無くてもやることは同じだし。

若い(早くディレクターになりたかった)デザイナーの頃は、ディレクターとは企画を考えクライアントに対してプレゼンテーションを行い、多くのスタッフを使ってひとつのプロジェクトを構築・成功させるため、時にはクライアントも説き伏せ、ねじ伏せるような力が必要と考えていたことがあります。例えると、クライアントやスタッフとは対面した位置で全体を引っ張っていくイメージ。出てきたデザインやコピー、写真などをチェックする、どちらかと言うと上から管理・指揮する少し偉そうな感じですね。

しかし、ずっと仕事を続けているなかで僕の意識と仕事の仕方も変わって来て、ディレクターはクライアントの考えを読み取り、その先を見て様々な準備と用意をするために必要不可欠なスタッフを集め的確に手配、スタッフにも投げっぱなし(振りっぱなし)ではなく、進捗や状況を把握して先に手を打つなど、実制作よりも準備とフォローに時間を費やす。クライアントやスタッフとは対面ではなく、横に並ぶイメージです。デザインだけをやるよりも、やることは山のように増えます。企画も考えるし、プレゼンもするし、撮影も行くし、ロケハンもするし、市場調査もするし、展示会にも行くし、打合せ・会議へも参加するし、宴会のセッティングもするし、販売先の開拓のために人をつないだり、出張のための飛行機の手配やホテルの予約まですることもあります。はい、何屋さんなのでしょうか?(笑

無駄に色んなことをやって居るわけではなくて、すべて必然があり、僕がやることに意味があると信じてるんだけど、たまに自分が三人ぐらい欲しい時があります。僕の場合は、クライアントがより良くなるためと信じるデザイン、クライアントを通して世の中が良くなったり、利用する人々が幸せになったりするためのデザインを実現する、その早道が「自分でディレクションする」ということだっただけで、優秀なディレクターに出会っていればフリーランスにはなっていないかも知れません。


いや、過去に素晴らしいデザイナー、ディレクター、プロデューサーにもたくさん出会っているので、僕の性格が組織に向いていないだけかも知れないな。たぶん。。きっと。




それから、デザイナー必読の書をご紹介しておきます。僕のInstagram でも紹介しています。たまにね。(普段は食べたものとか、気になった風景やモノとか、飲んでる人と自撮りするメモ代わり)

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

 

物事の捉え方、考え方にいつも感心させられつつ笑わせてくれるセンスは抜群。京都の先輩でもある、みうらじゅん氏の著書。デザイナー、企画者として必読の書。

 

口紅から機関車まで―インダストリアル・デザイナーの個人的記録

口紅から機関車まで―インダストリアル・デザイナーの個人的記録

 

 デザイナーになるならこれは絶対に読んでおけと言われた一冊。タイトル通り、口紅から機関車までデザインされていないものはないというお話。かなり字が小さくて読破するには気合が必要。

 

デザインの小骨話

デザインの小骨話

 

 東京大学大学院情報学環教授、プロダクトデザイナー山中俊治先生の著書。デザインにおける視点や考え方など、プロダクトに限らずどの分野にも共通する気づきのエピソードが満載。

 

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

 

Monotype社のタイプ・ディレクターであり、欧文フォントの定番「フルティガー」の改刻を行い、「たづがねゴシック」のデザイナーでもある小林章氏の著書。欧文フォントについての楽しく興味深い70のコラム。グラフィックデザイナー必読。

 

田中一光デザインの世界

田中一光デザインの世界

 

 

伝統と今日のデザイン

伝統と今日のデザイン

 

日本のグラフィックデザインを方向づけたと言ってもよい田中一光先生の著書。氏の著書、作品集はどれでも見て勉強になるけれど、若いデザイナーが知らなかったりするので、載せておきます。