デザインの余白

デザイナーの気ままなブログ。デザインのこと、京都のこと、そして気になること。 God is in the Details

専門学校に行くだけがプロになる道ではないということ

f:id:gridGraphic:20170731092655j:plain


先日ある方とお話をしていて、とても共感したことがあるので少し整理しておきます。

僕は10年以上前にあるデザイン系専門学校の講師をしていたことがります。最初は僕のデザイナーとしての経験や知識を学生に伝えるということに緊張しながらも、若い学生に「教える」ということで新しい発見がたくさんあり、実は「教わる」ことの方が多かったように思います。講師をしていた3年間は、今思えばとても貴重な経験でした。ただずっと講師をしながら引っかかっていたことがあったのと、独立間もないデザイン事務所の仕事が忙しくなってきたので、結果的に講師をやめることになりました。講師をしている間に出会った(担当した)生徒は、述べ300人くらいだったと思います。その生徒たちのうち、デザイナーとして業界に残り、いまだに連絡を取り合りあう教え子も数人います。皆、いまではデザイナーとして立派に仕事をこなプロに成長していて、とても頼もしい限りです。


専門学校に行くということ

さて、僕が気になっていたことと言うのは、先生と生徒の考え方というか、学校をどう捉えているのかということでした。

まず、学生はデザイナーになるべくして専門学校に入学してきていると思いますが、そのなかには社会へ出るまでの「執行猶予」と考えているとしか思えない生徒もいました。デザイナーになるという強い意志があるでもなく、ただなんとなく「カッコ良さげ」だったり「自分は少し他の人と違う才能があるに違いない」という感じでデザインの世界に入ろうとしているように見えました。しかし、その多くはデザインで食べていこう、プロになろうと一生懸命努力する生徒たちで、様々な性格の人間が集まる場で、ひとり一人の特性に合わせた指導はとても大変でした。講義の時間だけでなく、その前後に課題を作成したり、その課題の評価をしたり、ひとりずつ違う習熟度や理解度、センスなどに合わせてそれぞれ何をアドバイスしていくかなど、講師としての仕事は山のようにあります。

講師という立場で生徒と間近で接しながらいつも思ったのは、この高い授業料を払って彼らは何を得ようとしているのか?また彼らはそのことを理解しているのだろうか?ということでした。専門学校と言うのは、2年ないし4年間を真面目に通って卒業すればプロになれることを約束している訳ではありませんし、卒業生の多くがデザインとは関係のない職種に就く現実があります。またプロになったとしても、それを続けられる人間はかなり少ないと思います。僕自身が専門学校を卒業していますが、同期、先輩、後輩を見渡しても、現役で業界に残っている人間は片手で数えられる程です。悲しい現実ではありますが。


プロになるということ

僕が専門学校に入った理由については、とても長くなるので別の機会に書きますが、僕も専門学校に入れば自動的に2年後にはプロになれると思ったからでした。しかし現実は違っていました。
たしかに就職率は100%でしたが、それは卒業生が望むデザイン事務所や業界への就職ではなく、一般的な会社やショップへの就職も含めてということでした。その現実を知り、1年の時から良さそうなデザイン事務所に片っ端から電話をかけたり、学校の先生に紹介していただいたりして、その門を叩いて回りました。まだインターネットも普及しておらず、携帯電話も殆どの人が持っていないし、Macもまだなかった時代です。


「給料、バイト代は要りませんので、僕を使ってください。勉強させてください。」


と言って、夏休みと冬休みには、幾つかのデザイン事務所に通いましたが、意外なことに採用してくださった事務所はどこもちゃんと給料を支払ってくれました(笑
特に仕事と言っても専門学生なので、与えられる作業なんて少なかったでしょうし、仕事をさせると返って事務所の方々の仕事が増えるので、指示される仕事のほとんどが書類を広告代理店に届けるとか、図書館に行って資料を探すとか、コピーを取るとか、トレスコープで紙焼きをすることでしたが、毎日が楽しく新しいことの連続でした。なにより学校では教えてくれないことばかりで、自分ではとんでもなく経験値をためる事ができました。

その経験から、学校に行かなくてもプロになる方法はある。要はやる気と勇気だと思いました。しかし、そのことに気づくことができたのも、専門学校に入ったからであり、学校に行くことがまったくの無駄ではないと思います。今でも卒業した専門学校の同期の仲間達と連絡を取り合ったり、業界で活躍する仲間には刺激を受けます。


いつでもどこでも学ぶことはできる

現在、デザイン系の専門学校や大学に通っていて、プロとしてデザインをすることを考えている人には学校へ行くことの意味やどうすればプロになれるのかということを自分なりによく考えて欲しいと思います。学校が無駄とは思いません。ちゃんと学べば良いのですが、何をどう学ぶかは本人の努力次第です。カリキュラムをこなすだけではプロにはなれないし、なったとしても「普通」のデザイナーです。

学びは色んなところにあります。学校の中だけでなく、例えば毎日美術館に通うのも良いかも知れませんし、海に行くのも良いかも知れません。要は、自分が何かを学び取ろうとする気持ちなんだと思います。



ある方とはもっともっと辛辣な話をしていたのですが、それはプロとして一人前になってないと分からないかも知れません。また機会があれば書いてみます。

ということで、今回は「専門学校に行くだけがプロになる道ではない」でした。
デザイナーになることみたいなテーマで以前書いた記事もお時間あればどうぞ。

 

gridgraphic.hatenablog.com

gridgraphic.hatenablog.com

gridgraphic.hatenablog.com

gridgraphic.hatenablog.com

 

追記:デザイン系の専門学校について書きましたが、理容師や看護師など多くの専門職では、プロとして働くために国家資格を取得しなければならず、専門学校で学ばなければならならない分野があります。